15. 疾患者同士、必ず仲良くなれるわけではない
双極性障害II型寛解で、社会復帰にゆるやかにチャレンジしているsakuの体験記です。
自分が精神疾患もちになってみて、もともと親しかった精神疾患の友人やSNSで悩みを通じて知り合った人たちに励まされる一方、とは言え「同じ精神疾患者だから」「同じような気分障害に悩んでいるから」仲良くなれるとも限らないなと当たり前ながら実感しています。
知能の高い人たちに会うことの多い仕事だからか、お客さんや目上の人の中に一定割合で何らかの特性を持っているように思われる人たちがいます。
こちらが疲れているときにずっとハイテンションで話し続けたり、
「シリアルナンバーが気に入らない」などどうでもいいことへのこだわりスイッチが入ってこちらの作業工数を格段に増やしたり、
ふさぎ込んでいる様子を半日間無言で隣の部屋からアピールしてきたり、
機嫌がいいときには極度にフレンドリーなのに気分が落ちると途端に敵意むき出しで突っかったり、
そんな風にされることが、日常でちょくちょく発生します。
そもそも仕事なので、プライベートとはずいぶん状況が違います。
わたしは仕事において自分の双極性障害II型を開示していないですし、軽度なので相手から察知されることも少ないでしょう。
「分かり合おう」だとか「大変だよね」という共感は非常に生まれにくいです。
ほとんどの場合はわたしの一方的な観察に終わります。
一方的な観察において、相手の気持ちのメカニズム的なものは理解できるのです。
しかし客観的な観察や理解だけにとどまらず、わたしにも気持ちと言うものがあります。
「ああ面倒くさい」「依存されたら嫌だな」とか「理不尽だ」と思う気持ちが、表には出さないけれど確かにそこにあるのです。
親身に、というより、「どうすればお互い機嫌を損ねず、最短距離で省エネでクローズできるか」をチクチクチクチク考えている自分がいます。
その人と同じような困難を経験しながら、少し冷たい気持ちになってしまうことがあるのです。
ただ、あくまで仕事の上のやり取りで、一人の人間同士なので仕方がないことだとも考えています。
わたしではない、他の人の事例を少し。
以前の勤め先の総務部に知的障害の女性がふたりいらっしゃったのですが、そのふたり、実は仲が悪いと友人から聞きました。
ひとりは「気を遣ってもらったのならありがたく無理せずに行こう」、ひとりは「健常者と同じように頑張りたい」という障がい者としての考え方の違いからです。
それを聞いたときに
「大分類で同じ障害と言っても詳細は人それぞれだし、障がい者としてのスタンスも人それぞれだし、もちろんそれ以外の状況や価値観だって別だし、つまり類似した不自由を感じていたとしても分かり合えるとは限らないものなあ」
と当たり前のことに気付かされたことがあります。
ふたりのことを思い出しながら、もう一度やっぱりわたしのケースも仕方ないな、と。
まずは自分が疲れないように。
でも余裕があれば、もう少しやさしくできるように。